CDS(Credit Default Swap)と最近の報道について
リーマンショックの時にも同様の報道があったが、「ギリシャ・イタリアを含む欧州の財務基盤が脆弱な国債に対する、多額のCDS取引が混乱を増幅する」という話が、最近目に付くのでちょっとまじめにコメント。
CDS(Credit Default Swap)とは、平たく言えば、債券に対する保険をかけるイメージ。
イタリア国債を持っていて、こげつくのが不安な人がCDSを買うと、万が一焦げ付いた場合に全額補填される。かわりに保険料を支払う。
昨日のNHKの特集や、週刊文春11月24日号P46-47の池上彰氏のコラムにも、『CDS取引がある日突然爆発する』といった表現が。
本当にそうなのか?
CDSの売り手はプロの金融機関であり、売りっぱなしでリスクを溜め込むような愚かな金融機関は基本的には存在しない。
彼らの言うように爆発する金融機関がいるとしたら、CDSに限らず、単に金融商品ポジションのリスク管理が全くなされていないという、ただそれだけこと。
「CDSは、難しいデリバティブ商品である」的な報道も多いが、実は非常にシンプルな商品。例えば最上級のドイツ国債と当該イタリア国債との信用リスク格差(金利差)を売買するようなもの。
ドイツ国債10年が2% で イタリア国債10年が7%なら イタリア国債のCDSはざっくり5%で取引されるのだが、これは年率換算なので、10年分だと元本の約50%が保険料となる(細かい複利計算は省略) 。
CDS(保険)の売り手のリスクヘッジは簡単で、2%のドイツ国債を購入し7%のイタリア国債を空売りするだけだ。
この場合、受取金利は2%で、空売りの支払金利が7%で差し引き毎年5%赤字になるのだが、その分が丁度保険料5%の受け取りになって、年間収支はトントンになる。
イタリア国債が焦げ付いた場合、CDSの売り手はCDS契約によりイタリア国債の元本を補填することになるが、空売りしているイタリア国債も紙くずになって元本全部が利益になるので、ここも収支トントンになる。
実務では、仕入れ(ヘッジポジション)よりやや割高な値段でCDSを売るので、売り手は、リスクをヘッジしつつ若干のフィーが残る。
このヘッジにより、仮にイタリアがデフォルトしても、彼らの言う大量のCDSを抱えた金融機関が吹っ飛ぶと言うことは考え難いのであるが、大手マスコミの金融担当者・著名なコラムニストの方たちの反論を聞いてみたいものである。
ちなみに、リーマンショックの時の、サブプライムローンの場合は、若干様相が変わっている。サブプライムローンのマーケットは、国債のマーケットとは比較にならないほど薄いため、殆どヘッジ取引をすることが出来なかった。
それが、被害を拡大させた要因の一つであることは間違いない。
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